使われなくなった工場をAIデータセンターへ転用する動きが、日本国内外で加速しています。AI技術の発展に伴うデータセンター需要の急増に対応するため、既存の工場を活用することでコスト削減やインフラの有効利用が可能となります。
国内事例
ソフトバンク
2025年3月14日、ソフトバンクは大阪府堺市にあるシャープ堺工場の土地や建物などを約1,000億円で取得する売買契約を締結したと発表しました。
対象となる工場は大阪府堺市にあるシャープのテレビ用液晶ディスプレイ工場跡地で、現在は使われていない広大な敷地です。ソフトバンクはこの土地・施設の一部を約1000億円で取得し、2025年度中にも改修工事に着手、2026年の稼働開始を目指す計画です。完成すれば、開始時点の電力容量が国内最大級の150MW規模にもなる見込みです。
ジャパンディスプレイ
ジャパンディスプレイ(JDI)も自社の工場資産をAIデータセンターへ転用する方針を打ち出しました。JDIは2026年3月までに千葉県茂原市の茂原工場でのディスプレイ生産を終了し、その後この工場をAIデータセンターに転用する計画です。
同社は「茂原工場の資産売却とAIデータセンターへの転換を中心に、AIデータセンターを必要とする企業とも協議を進めている」と述べており、既に複数の企業と交渉中であることを明らかにしています。JDIの投資家向け説明によると、茂原工場は現在100MW以上の電力供給能力があり、敷地面積約33.9万㎡の広大な用地も「最大限に活用されておらず採算が取れていない」状態だといいます。クリーンルームを備えた既存建屋(延べ36.9万㎡)を活かしつつ、収益性の向上を図る狙いがあるようです。
海外事例
グーグルは、フィンランド南部の旧製紙工場をデータセンターに転用。湾岸立地を活かし、海水冷却システムを導入しました。また、米国ではアラバマ州の閉鎖した石炭火力発電所を取得し、約6億ドルを投じてAIデータセンター化を進めています。シカゴでは20世紀初頭のパン工場がデータセンターとして再開発中です。
香港では、古い工業ビルをデータセンターに転用する動きが一般的で、政府も用途変更を支援しています。中国や東南アジアでも、工業団地の一角や地下施設の活用が進んでいます。
メリット
経済面
経済面では、コスト削減と地域活性化が期待されます。既存の工場インフラを活用することで、初期投資を抑えつつ、遊休資産の売却による企業の財務改善も可能です。データセンター運営により新たな雇用を創出し、地域経済の活性化にも貢献します。
技術面
冷却・電源設備の再利用が利点です。工場には高負荷機器用の冷却設備や高圧電力供給システムが整備されており、これを転用することで効率的な運用が可能です。特に寒冷地域の施設では、自然冷却を活かした省エネルギー型データセンターの開発が進んでいます。
今後の展望
AI技術の進化に伴い、データセンターの需要は今後も拡大すると予測されます。政府もデジタルインフラの地方分散を進めており、遊休地や廃工場の活用がますます増える見込みです。これにより、地方の産業振興と環境負荷の低減を両立させる新たな産業モデルが形成されつつあります。
廃工場がAI時代の基盤施設へと生まれ変わるこの動きは、今後さらに加速するでしょう。
